甘やかし上手なエリート医師に独占溺愛されています
「麦茶かレモンティーくらいしかないんですけど」
ワンルームの狭い我が家に悠さんがいる。彼の家には何度かお邪魔したことはあっても、逆は初めてだった。
非日常に緊張した面持ちで、キッチンとは呼べないほどのスペースにある小さな食器棚からグラスを取り出す。
悠さんは我が家の淡いピンクのラグに座り、ベッドに転がっている小さいサイズのウニを眺めている。
ローテーブルに氷とレモンティーを入れたグラスを2つ置き、悠さんから少し離れて腰を下ろした。
「すみません、私コーヒー飲まないから家になくて」
「いや、ありがとう。…それよりも、本題に入ってもいいかな」
悠さんの抑えきれない焦れたような声に、私も覚悟を決める。
「…はい」
ゆっくりと頷いてから、私は真っ直ぐに悠さんを見つめる。
その視線を受けても逸らさずに見つめ返してくれる彼の眼差しは以前と変わらず熱く、やはり私を想ってくれているのではと縋りたくなる。
それでも病院で聞いてしまった噂や、佐々木さんから聞かされた話を無視することは出来ない。
何度か深呼吸してから、私は意を決して口を開いた。