甘やかし上手なエリート医師に独占溺愛されています
「佐々木さんと、…結婚すると聞きました」
「……は?」
悠さんが私の発言を理解するのにたっぷりと時間を取ってからぎゅっと眉間に皺を寄せたのを見ながらも、私は言葉を続けた。
「あれからも、佐々木さんと何度か会ってますよね?」
「遥、それは」
「悠さんのお父さん、健康推進会の理事長をされてるんですね。C健で働いてるのに知らなかった…」
悠さんがハッと息を呑む。
あの日の佐々木さんの勝ち誇った顔がちらついて離れない。
「私…、何も知りませんでした。お父さんのことも、悠さんがそのあとを継ぐって期待されていることも、ふ、相応しい女性と…結婚の話がすすんでいることも…」
「遥!」
話しているうちに涙が滲み、声が震えてしまう。
そんな惨めな姿を晒したいわけじゃないのに、どうしても現実を受け入れられず、言葉にすると胸が痛くて堪らない。
もしも私が悠さんに釣り合う家柄だったら。もし私が悠さんを理解して支えられる医者だったら。
そうでなくても、あの人ほどの美貌があったなら。
悠さんに相応しい女性と認められ、結婚する相手の候補として選んでもらえたんだろうか。