甘やかし上手なエリート医師に独占溺愛されています
「不安にさせてごめんって思うのに、妬いてくれる遥が可愛くて仕方ないな」
ちゅっと音を立てて瞼にキスが落とされる。驚いて真っ赤になる私を目を細めたまま見つめ、「あー、ほんとに可愛い」とつぶやく。
「父親の立場のことを言わなかったは、本当に特に理由はないんだ。確かに遥の職場の組織のトップではあるけど、俺は俺で父の仕事とはそんなに関わることもないし。でも他人から聞かされるのはいい気しないよね、ごめん」
私は小さく首を横に振った。
落ち着いて話を聞いてみれば当然のことで。
お見合いの件は特に相手が決まっていたわけでもない段階だったのだから、わざわざ話して聞かせることでもなく。
親の職業なんてきっかけがなければ付き合って数ヶ月の恋人に必ず話さなくてはならないことでもない。
現に悠さんだって、私の母が亡くなるまでどんな仕事をしていたかなんて知らない。私も特に話そうとも隠そうともしていない。
悠さんは父親が大きな組織のトップという立派な地位を持った人であることを、誇りには思っていても自慢するような人じゃない。
ただそれだけのこと。
「悠さん…」
「ん?」
私を見つめる優しげな瞳が変わらずこちらを向いている。
どうしてこの人を信じられなかったんだろう。