甘やかし上手なエリート医師に独占溺愛されています
父の立場もあって一般家庭よりは多少裕福だとは思うが、堅苦しい家柄でもなく、遥ならば両親ともに間違いなく気に入られるだろうという確信もある。
だから緊張なんかしなくてもいいと話してはみたものの、彼女にとってはそうもいかないらしい。
「さ、着いたよ」
車を降りインターホンを鳴らして待つ間、手土産の袋を持ってガチガチに身体に力の入っている遥の肩を抱き寄せ頬に口付ける。
少しでも緊張をほぐそうという気遣いというよりは、珍しい様子の遥が可愛くて仕方ないせいだ。
「な…もうっ、悠さん!」
案の定真っ赤になった頬を抑えながら抗議してくる遥を笑いながらなだめていると、ガチャリと解錠の音と共に玄関の扉が開かれる。
「まぁ、いらっしゃい」
笑顔で出迎えてくれた母を見て、俺の腕をポカポカと叩いていた遥はシャンと背筋を伸ばして挨拶をする。
「初めまして、瀬尾遥と申します。今日はお時間を取って頂きありがとうございます」
丁寧な所作でお辞儀する遥に対し、母が穏やかな微笑みで言葉を返す。