甘やかし上手なエリート医師に独占溺愛されています

遥の誤解が解け、彼女を失うかもしれないという危機を脱した1週間後。その元凶である佐々木麗子が再び一橋総合病院に現れた。

病院で思わせぶりに俺との仲を話していただけでも不愉快なのに、まさか勝手に俺の住むマンションを調べ、遥に接触し彼女を傷つけていただなんて、頭が沸騰しそうなほど怒りがこみ上げてくる。

そんな俺の感情を逆撫でするかのように、麗子はにこやかに「ねぇ悠。あのこと、お父様に話してくれた?」とナースステーション前の廊下で声も潜めず話し始めた。

必要以上に距離も近く、病院にはそぐわないキツイ香水の匂いが鼻につく。こういうところも彼女を医師として軽蔑してしまう要因だった。

比較的落ち着いた午後の時間帯。
同僚や看護師たちもあからさまな視線はよこさないものの、こちらの会話に注意を向けているだろいうことは明白だ。

「なんの話?」
「やだぁ、私のこと紹介してくれるっていう約束!」

ただ単にコネでもう一度働かせてほしいという話をわざわざ含みを持たせて言うのは、やはり周りに自分たちの関係を匂わせたいのだろうと察しがつく。

付き合っていた当時も自己中心的な性格に辟易していたが、今となっては嫌悪感しか沸いてこない。

そっちがそのつもりなら、こちらも容赦はしない。もっとも、遥を傷つけた時点で容赦する気もないのだけど。

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