甘やかし上手なエリート医師に独占溺愛されています
その話題が出た瞬間、隣で腕に絡みつこうとしている彼女の口元に、勝ち誇ったような嫌な笑みが浮かんだのを見逃さなかった。
俺はその蛇のような手から腕を引くと、質問してきた看護師に向かい「プロポーズもまだだけどね。俺はそのつもりで両親に紹介する予定だよ」と笑顔で答える。
目の前の看護師だけでなくナースステーションからも驚きの声が聞こえ、この病棟は暇じゃないはずなんだけどなと小さくため息が漏れる。
それでもこの状況は好都合なので存分に利用させてもらおうと微笑みを向けた。
「彼女はまだ若いからね。どれだけ俺が結婚したくても頷いてくれるかわからないけど、他の男に取られないように頑張るよ。もう彼女以外の女性は考えられないから」
にこやかに話す遠巻きで黄色い声が上がったのを聞きつつ、隣に立つ佐々木麗子が笑顔のままピクリと眉間に皺を寄せたのを横目で確認する。
最初に質問してきた看護師も『まだ若い』というワードに引っかかりを覚えたのか、俺と麗子を交互に見ながら「あの、九条先生の彼女って…」と俺の期待していた言葉を投げかけてくれた。
待ってましたとばかりに、隣の女性とは全く違う人物像を語る。
「8歳年下なんだ。小柄で小動物みたいに可愛い子で、俺だけじゃなく以前外科部長だった『鬼の熊澤先生』もデレデレになるくらい素敵な女性だよ」
「悠!?」
驚いて大きく目を見開く看護師に惚気けていると、隣から白衣が皺になってしまうほど腕を強く掴まれる。