甘やかし上手なエリート医師に独占溺愛されています
信じられないといった表情の佐々木麗子の後ろでは、看護師たちが先程のざわめきとは別の種類の好奇な目で成り行きを見つめているのがわかる。
「なに?」
「なにって…冗談でしょう?本気であんな子供みたいな子と結婚しようだなんて考えてるの?」
まだ自分優位に話が進むとでも思っているのか、遥を馬鹿にしたような笑い方をする。そんな態度こそ俺の逆鱗に触れていると気が付かないのだろうか。
「あなたのお父様は医学界のトップで、あなただっていずれその地位までいくでしょう?そんな優秀な医者の隣に、何も知らない子が居ていいはずないじゃない。あなたのお母様のように、側で支えるには元医師や看護師の方が理解しあえるはずだわ」
あぁ、そうやって遥を傷付けたのかと大声で詰りたいほどの怒りを、ぎゅっと強く目を閉じ、ここは病院だと念じることでなんとか耐える。
「父の地位を継ごうなんて微塵も考えてないし、興味もない。遥との結婚はもちろん本気だし、子供みたいという発言は訂正してほしいね。彼女はれっきとした成人女性だし、自分の仕事に誇りを持った素晴らしい女性だよ。彼氏が医療ミスをしたからと職場を放り出す君よりもはるかにね」
「な……っ!」
「自己保身のためにさっさと患者も病院も見捨ててくるような医者を、一体どんな病院が雇ってくれるんだろうね」
そこまで言われ、ようやく俺の怒りや自己の立場の危うさに気付いたのだろう。今までの余裕ぶった微笑みが崩れ、頬を引きつらせた歪な表情に一変した。