甘やかし上手なエリート医師に独占溺愛されています
初夏の風が清々しく感じる5月。大型連休が終わったばかりで、まだ水曜日だというのに1週間がとても長く感じる。
この職場で働き始めて1年以上が経つけど、毎回初めての現場に行くときは少し緊張する。
だけど今日の緊張は、いつものそれと全然種類が違っていた。
「今日はよろしくお願いします。わからないことだらけなので、もしかしたら迷惑かけるかも……、瀬尾さん?」
目の前の男性に、低くて甘い声で名前を呼ばれてハッと我に返る。
あまりの麗しいイケメンぶりに見惚れてしまった。今から仕事を始めようというのに、なんという体たらく。
気を引き締めようと心の中でグッと握りこぶしを作っていると、心配そうに長身を屈めて私の顔を覗き込んできた。
「大丈夫?顔赤くない?もしかして風邪引いてる?」
「いっいえ!大丈夫です、すみません」
至近距離のイケメンの破壊力たるや、身体中の血を一瞬で顔に集められそうなほど凄まじい。
不自然にならない程度に1歩引いて距離を取ると、他の事務の人達が乗ってきたワゴン車やレントゲン車から荷物を下ろしている様子が目に入った。
いけない。見惚れていないで仕事をしなくては。