甘やかし上手なエリート医師に独占溺愛されています
母を見送り、なんとか1人で生きていかなくてはと考えた。
大学を中退してしまっているので就活は難しい。まずはバイトをしながら生活を立て直さなくては。
そこで思いついたのが、母の病気を見つけてくれた健康診断。
医師や看護師になるのは無理でも、そんな健診に携われる仕事はないだろうか。
調べて見つけたのが、今お世話になっている健康推進会の中央健診センターだった。
四十九日を終えてすぐに履歴書を送り、大学中退という微妙な学歴にも関わらずバイトとして雇ってくれたC健には感謝しきれない。
正職員でなくてもいい。私は今のこの仕事を誇りに思っていた。
「誰か1人でも、気付かなかった身体の異変にいち早く気付いて、母のように手遅れになってしまう人を救いたい。そのお手伝いが、したいって、思っ、て……」
そこまで話すと、正面から向けられている真っ直ぐな眼差しに気が付きハッとする。
私、何を自分のことをぺらぺらと…。
それも今日初めて会ったばかりのお医者さんに『人を救いたい』だなんて…!
それでなくても母子家庭で母を亡くしただなんてお昼休憩に相応しくない重たい話題だ。
一切口を挟まずにいた九条先生は、きっと何の話を聞かされているんだと呆れ返ってしまったに違いない。
穴があったら入りたい。いっそ穴を掘り起こしてでも潜り込みたい気分だった。