甘やかし上手なエリート医師に独占溺愛されています
名取フーズ本社の健康診断は全部で5日間。水曜日から土日を挟んで火曜日まで。
初日にクマ先生の代理で急遽来てくれた九条先生は、全行程日に入ってくれることになった。
派遣の先生や技師さんたちは基本各自で現場まで来るので、電車や車でそれぞれ帰っていく。
私達C健の事務や看護さん、検査さんは朝早くにC健の前に集合してワゴン車やレントゲン車に機材を詰み込んでから現場へ向かう。
今回のように通しで何日か日程が組まれている日は会場の撤収などの片付けがないので、帰りは車に乗せてもらってC健まで帰るも良し、時間によっては電車で直帰も良しとされている。
初日の帰りの車の中、私はワゴン車の中で九条先生と一緒にお昼休憩に入っていたのを、織田さんと三橋さんに問い詰められた。
『なんでそんなオイシイ展開に?』
『いや、なんででしょう…』
『九条先生、瀬尾さん狙いかー。羨ましい』
『いやいやいや、そんなわけないじゃないですか!私がうっかり名取フーズの冷食が好きだって話したせいで、気を遣って社食に付き合ってくださったみたいで…』
車内の狭い空間は逃げ場がなくて縋るように朱音ちゃんを見たけど、『愛されキャラだねぇ、遥ちゃんは』と、昼休みにも聞いたフレーズを繰り返して笑っているだけ。
『確かに、優秀な医者なら瀬尾さんみたいな可愛くて癒やし系を求めるのかも』
『うちらみたいなガツガツ系はお呼びじゃないか』
『よし!瀬尾さん頑張って!』
いや、頑張るも何も…と口を挟めるような隙間は貰えない。