甘やかし上手なエリート医師に独占溺愛されています
「瀬尾さん、今日は一緒に外にランチ出ない?」
「え?」
「社食もいいけど、ちょっと気分転換に。どうかな?」
―――2人で、ランチに…?
いくら仕事のお昼休憩とはいえ、社食とはワケが違う。2人きりで外に出て食事なんてより緊張してしまう。
それに…、先生はどうして私を誘ってくれるんだろう。
聞けば8個も年上の九条先生は話題も豊富で話していると私はとても楽しいけど、先生は退屈だったりしないんだろうかと不安になる。
それでも、断るという選択肢が浮かばなかった。
「はい。私でよければ」
「良かった。瀬尾さん、何食べたい?」
この名取フーズの本社ビルはブランドショップや百貨店が多く立ち並ぶ、高級感と昔ながらの歴史が混在する街にある。
少し歩けば各路線の地下鉄の駅が点在し、観光だけじゃなくオフィス街も有しているため、ランチする場所には事欠かない。
今頃朱音ちゃん達が行っているだろうカフェは、ビルから西側にある地下鉄直結の商業施設に入っている、テラス席のあるオシャレなお店らしい。
母子家庭で育った私は贅沢とは無縁で、あまり外食をしてこなかった。
もちろん高校の時も友達とご飯を食べに行くこともあったし、大学在学中にハタチになった時にはお祝いに飲みに行ったりもした。
それでもあまりオシャレな場所はどうしても気後れしてしまう。そんな場所で何が食べたいかと聞かれても、すぐにこれと思いつくものがない。