甘やかし上手なエリート医師に独占溺愛されています
当然社交辞令だと分かってはいるけど、九条先生にこんなことを言われれば勘違いしてしまう女性だっているはず。
人当たりの良いイケメンドクターって罪な存在だ。
またも返事に困って手持ち無沙汰になり、曖昧に笑いながら結んでいた髪をほどいた。
ゴムは手首に通し、手ぐしで髪を整えていると、先生の手が私の顔に伸び、頬に垂れたひとすじの髪を、長い指で耳に掛けられる。
その親しげな行動に、私は目を見張った。その間も九条先生は私を真っ直ぐに見つめたまま。
「……っ」
ドキドキどころじゃない。
心臓が壊れそうなほど高速でドドドドドドとリズムを刻み続ける。
なに?!
なんで今私は九条先生とこんな距離で見つめ合ってるんだっけ?
自分の置かれた状況が理解出来ず、でも目の前の先生から視線を逸らすことも叶わない。
「耳、ピアスじゃなくてイヤリングなんだ」
九条先生の指は、そのまま私の耳に添えられている。
全神経が耳に集中しているはずなのに、肝心の聴覚が鈍り、先生の放った言葉が緊張のせいで全く頭に入ってこない。
真っ赤になっているであろう顔も耳も今更隠すことなんて出来なくて、私は泣きそうになりながら先生の指じゃなくて会話に集中しようと頭を働かせる。