甘やかし上手なエリート医師に独占溺愛されています

なんだっけ…?
耳?
そうだ、ピアス!

「えっと…はい。ピアスは、あけてなくて…」

私の耳には、黄色いミモザのドライフラワーをレジンで閉じ込めたイヤリングが揺れている。
少し前に友達と買い物をしていた時に一目惚れして買ったものだ。

なんとか言葉を紡ぐと、耳に触れていた指先がそっと引いていく。先生にバレないように慎重にゆっくりと息を吐き出した。

「そうなんだ」
「ピアスを開けると運命が変わるって、私が中学の頃言われてて」
「あぁ、あったね。そんな都市伝説みたいな話」

先生は何事もなかったかのように、私の話に相槌を打ってくれる。顔が真っ赤なことに触れないでいてくれるのはありがたい。

そのおかげか、なんとか心臓が通常運転を始めてくれた。暴走してしまわなくてホッとする。

それでもまだ緊張の余韻は残っていて、沈黙が怖くてペラペラ喋ってしまう。

「だから、ピアスを開ける時はちゃんと覚悟してからにしようって決めてるんです」
「覚悟?」

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