甘やかし上手なエリート医師に独占溺愛されています
「瀬尾さんはお酒はあまり飲まないの?」
「え?」
「ワイン、遠慮しなくて良かったのに」
コースを注文する時に、店員さんに料理に合うワインのおすすめがあった。
車で来ていた九条先生が断っていたので、もちろん私も遠慮した。さすがにお昼から先生を差し置いて1人で飲むなんて出来ない。
「いえ。恥ずかしいんですけど、ジュースみたいな甘いお酒しか飲めなくて」
「なるほど。カクテルとか?」
「はい。とはいっても、あまり飲む機会もないですけど」
大学にいた頃は何度か付き合いで飲みに行ったりもしたけど、1人暮らしの今、家で飲んだりもしない。
「じゃあ今度は車はやめて、美味しいカクテルの飲めるバーに行こう」
さらりと次の約束を取り付ける先生。
もしかして、また2人で出掛けることがあるってこと?
もしかしたら社交辞令かも知れない。
浮き立つ気分を抑えながら、「いいですね」と当たり障りない返事をしてしまった。
ここでもお会計は九条先生がさっとカードで済ませてしまって私の出る幕はなし。
「俺が誘ったんだから大丈夫」と言われてしまえば、それ以上食い下がることは出来なかった。