甘やかし上手なエリート医師に独占溺愛されています

私はこの名取フーズの担当事務である中原朱音(なかはら あかね)ちゃんや他の事務バイトの子と一緒に、1番大きな会議室を健診会場に作り変えていく。

朱音ちゃんは私よりも半年ほどあとにこのC健に入所してきた。バイトの私とは違い正職員さんで、中途採用らしく年齢も私より2つ上。

よく小動物系だと言われるいわゆる『たぬき顔』の私と違って、くっきりとした二重まぶたはしなやかな猫を思わせる。
可愛いと綺麗が混在した羨ましい顔立ちの朱音ちゃんだけど、本人はまったく気取っていないところも彼女の魅力だった。

ズバズバものを言う朱音ちゃんと人見知りの私では正反対のようだけど、話すと意外にもウマが合い、1人っ子の私にとって今では何でも話せるお姉さんのような存在だ。

「ぬあー、腰痛い!受付でずっと座ってるのしんどいな。今日3時までかぁ」
「ふふ、結構大きい企業だもんね。ここも友藤さんが取ってきたのかな?」

まだ24歳という若さで腰をトントン叩く朱音ちゃんが可笑しくて笑ってしまう。

友藤遊人(ともふじ ゆうと)さんというのは出張健診部の営業担当の男性職員。以前は別の系列病院の健康管理センターにいたらしいけど、去年の4月にC健に異動してきた。

『女好き』とか『遊びで1回寝たらおしまい』なんてちょっと良くない噂も聞くけど、優秀な営業マンで新規契約を多数取っているらしい。

「みたいだね。チャラ男のくせに仕事だけは出来るからタチ悪い」

朱音ちゃんは本当に嫌そうに顔をしかめる。
すると背後から「それは褒めてる?けなしてる?」と声がかかった。


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