甘やかし上手なエリート医師に独占溺愛されています

「はい。マーゲン介助に入ります。最終日で人が少ないので、介助に入れるのが私しかいなくて」
「そっか。最終日なのに近くにいないのは残念。じゃああとで」

私の頭を軽く撫でると、ポンと到着を告げたエレベーターに乗り込んでいった先生の背中を見送り、はぁーっと大きく息を吐き出した。

あの無自覚な甘い発言は何とかならないものなのかな。
海外生活が長いとあんなことになるの?でも留学してたのってイタリアじゃなくてドイツだったはず。

イタリアへの偏見の混じった思考をぐるぐる煮詰めながら、私は給湯室で水を汲んでレントゲン車に戻った。

水を計量して撹拌機へ注いで、備え付けの棚からバリウムの粉を取り出して少しずつだまにならないように入れていく。今日は残り受診者数があまり多くないから、作りすぎないようにしないと。

その他にも紙コップや発泡剤は足りているか、ティッシュが補充してあるかなど、細かい所まで確認する。

色々考え事をしながら作業をしていると、いつの間にか準備を終えた白衣姿の間宮さんが随分近い位置にいることに気が付いた。

「ま、間宮さん?」
「瀬尾さんってさ、彼氏いるの?」

唐突な質問に驚いて答えられずにいると、私の白衣のポケットにあるスマホが振動する。

「ごめんなさい、ちょっと」

間宮さんから距離を取りつつ電話に出ると、相手は朱音ちゃんだった。

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