甘やかし上手なエリート医師に独占溺愛されています
心の中で言い訳をしながら慌てて視線を逸らそうとしたけど、彼女の視線は私ではなく、私の隣に向けられていた。
…さすが九条先生。
こんな美人の視線さえ釘付けにするなんてと、どこか他人事のように思っていると。
「悠?」
その女性は、驚いたあとすぐに喜びいっぱいの表情で九条先生を親しげに呼んだ。
「悠!久しぶりね、いつ帰ってきてたの?!」
大きなショップバッグを肩に掛け直しながら、高いヒールの音を鳴らして美しく歩いてこちらに近付いてくる。
知り合いなのかな。先生と同年代に見えるし、名前で呼び捨てにしていた。
ちらりと隣の先生を見上げると、懐かしい人との再会にしてはかなり険しい顔をしていて驚く。
この顔、この前間宮さんとのことがあった時に見たような……。
「連絡しようにも、あなた番号変えたでしょ?繋がらなくて驚いたわ。ねぇ時間ある?向こうでの話も聞きたいし、私も悠に相談があるの」
彼女は先生と手を繋いでいる私のことなど、まるで視界に入っていないかのように彼に話しかける。
その態度で、きっと以前先生と関係のあった人なんだろうと何となく察しはついた。
女性が先生に触れられるほど近くに来ると、大輪の薔薇を思わせる少しキツイ甘い香りが鼻につく。