甘やかし上手なエリート医師に独占溺愛されています
こんな綺麗な人が、きっと先生の元彼女…。
チクンと胸が針で刺されたように痛んだ。
「上のカフェで良いかしら。それともどこか」
「悪いけど」
どんどん話が進んでいってしまいそうで、私が繋いでいる手を離そうとすると、先生はぎゅっと力を込めて手を握り直した。
「彼女と一緒なんだ」
「…そう。じゃあ手短に話すわ。悪いけど、どこかで時間を潰しておいて頂けるかしら」
初めて私に向けられた視線はお世辞にも友好的とは言い難いもので、目を合わせることも憚られて俯いてしまった。
彼女の自信に満ちた態度に、心が勝手に萎縮してしまう。
こんな時、自分の口下手さや、自信の無さが嫌になる。
たぶん客観的に見ても、彼女の言い分は自分勝手だと思う。
その上、あからさまに邪魔だという視線を投げかけられたのに、私は言い返すどころか視線を合わせることすら出来ない。
仕事でクレームに立ち会ったことはあっても、こんな風に個人的に悪意を向けられたことがなくて、対処の仕方すらわからなかった。
自分の情けなさに唇を噛んでいると、先生のため息が聞こえてビクッと身体が竦んだ。