甘やかし上手なエリート医師に独占溺愛されています
先生も私の態度に呆れてしまっただろうか。
それとも、挨拶のひとつも出来ずに俯いている私に落胆してる…?
どうしよう……。
「生憎、君に割く時間はない」
普段の優しい声音とは違い、硬質で冷たく感じる物言いに、空気がピンと張り詰めた。
先生は繋いでいた手を一旦離すと、私の肩を抱いて自分に引き寄せる。
驚いて見上げると、大丈夫だと言わんばかりに優しく微笑んでくれて、私はどうしようもないほど泣きたい気分になった。
「まぁ…しょうがないわね、突然だったし。じゃあ日を改めて」
「佐々木先生」
"先生"…。
ということは、彼女もお医者さんなのだろうか。
まさか断られるとは思っていなかったのか、少し狼狽えた様子の佐々木先生と呼ばれた女性はそれでも食い下がろうと話を続けるけど、その言葉も九条先生によって遮られた。
「プライベートで会う気はないし、職場もあなたは別の病院に移って俺とは違うはず。2度と会うことはないよ」
ハッキリと『会わない』と拒絶の意思を言葉にした先生。
きっと後半は、私に聞かせるための言葉でもあるんだと理解した。