甘やかし上手なエリート医師に独占溺愛されています

「まずは、ごめん。嫌な思いをさせて」
「いいえ。先生、ちゃんと断ってくれましたし」
「それは当然だよ」

ソファで膝を突き合わせて座るから、車に乗っている時以上に距離が近い。

それでもこれから話す内容はテーブルを挟んで向かい合ってするよりも、こうして触れ合える距離で聞くほうが安心できる気がする。

そこまで考えて先生はここに連れてきてくれたのだと思い至り、私はまた泣きたい気持ちになった。

「遥も察してる通り、あの女性はドイツに行く少し前まで付き合ってた人だ。彼女も医者で、同じ病院で働いてた」

思っていた通りだったので、またこくんと頷いた。

「付き合ってたのは1年半くらいだったと思う。まぁお互い仕事が忙しくて、実際に2人で過ごした体感はもっと短い。別れたのは、彼女が他の男を選んだから」
「えぇ?!」

他の男性を選んだ?
あの人が?
信じられない別れの理由に目を見張った私に、先生は苦笑して頷いた。

「そもそも付き合おうって言われた時に、俺は結婚する気はないと話してたんだ。彼女もそれを了承して関係が始まった。でも…半年くらい経った頃からいつかは結婚したいと言われるようになって、それ以降はあまり良い関係性とは言えなかった」

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