甘やかし上手なエリート医師に独占溺愛されています
「先生は、結婚願望ないんですか?」
「あの頃はまだ25とかだったから。考えられなかった。それに、価値観も合わなかった。あんな感じで人の話を聞かないところも…、ってこれ以上言うと愚痴に聞こえて良くないね。ごめん」
「いえ」
……なるほど。
私はさっきの佐々木さんの言っていた『…まだ怒ってるの?』という言葉と、先生の『お互い様だ』という言葉に納得した。
きっと結婚願望のあった佐々木さんが、結婚する気のない九条先生よりも他の男性を選んだことに対しての発言だったんだ。
「…未練は、なかったんですか?」
付き合おうと言い出したのは佐々木さんでも、1年半も付き合っていた彼女が他の男性を選んだなんて、ショックだったんじゃないのかな。
それにあんなに綺麗な人だもん。きっと付き合っていた時は自慢の彼女だったに違いない。
そう考えると、なんだか平凡な自分が悲しくなってくる。
身長は平均以下で、染めたことのない黒髪は艶はあるものの真っ直ぐで巻いてもすぐに戻ってしまう。
童顔のせいか未だに成人していると見られないことも多い。このお店に入った時に店員さんが私を見たもの、未成年に見えたのではと思う。
あの人とは正反対の容姿。
自分で彼女への気持ちは残っていないのか聞いたものの、返事を聞くのが怖くて俯いてしまう。