甘やかし上手なエリート医師に独占溺愛されています
すると先生は私の顎に指をかけてゆっくりと視線を上げさせると、目を合わせて安心させるように微笑んだ。
「ないよ。まったく」
大きな両手で頬を包み込まれると、ドキドキするのに安心する。
もっと、もっと触れていて欲しい。
「こんなこと遥に言うと幻滅されそうだけど、今まで恋愛に重点を置いたことがなかった。この年だし何人か付き合った女性もいるけど、自分から告白したことはないし、別れる時に寂しいと思ったこともないな。勉強や仕事が忙しかったし、気のおけない友達と会ってる方が楽しかった」
先生の口から語られる過去に、ゆっくりと耳を傾ける。
彼にとって、恋愛はかなり優先順位が低いらしい。
お医者さんだから仕事第一になるのは当然だし、自分から告白したことがないというのも、これだけかっこよければ納得だ。数少ない休日を友達と会うのにあてたいのもわかる。
私の知らない九条先生をたくさん知って、理解したい。
そんな気持ちで話を聞いて頷いていると、先生はちょっと照れたような笑顔を私に向けた。
「俺ね、遥が初めてなんだ。みっともなく嫉妬するほど誰かを好きになったのは」
「…え?」
私が聞き返したのと同時に「失礼いたします」と、ドリンクと料理が届く。
先生の手が私の頬から離れてしまい、火照った甘い熱だけが残った。