△は秘密色、○は恋色。~2人の幼馴染みを愛し、愛されてます~
メインキャストの最後に紹介されたのは剣杜だった。剣杜は満面の笑みを浮かべて立ち上がった。澁澤と同じように全員に視線を向けた後に、最後に澁澤にニコリと微笑みかける。
「初めましての方が多いと思います。モデルの椛です。今まで役者経験がないのでドラマなどは全てお断りしていたのですが、大好きな澁澤さんの作品へのオファーと聞き、頑張って挑戦しようと思い受ける事を決めました。演技は本当に素人かもしれませんが、精一杯頑張ります。あ、あと澁澤さん、あとで本にサインしてもらってもいいですか?」
「もちろん、いいですよ」
「わぁ!ありがとうございます。家宝にします」
モデル用の満面の笑みを受けて大げさに喜ぶ剣杜に、周囲から笑いが漏れる。澁澤も満更ではにようで、誇らしげな表情になった。
「出演するシーンは短いものなのですが、勉強のために他の仕事がないときは、現場にお邪魔させていただき、見学し勉強させていただきます。どうぞ、よろしくお願いしまう」
背筋を伸ばして、頭を深く下げる。
温かい拍手を貰い、剣杜は安心した表情を浮かべて椅子に座った。
ここまでは全て演技だ。何が楽しくて虹雫を傷つけた相手に微笑みかけなければいけない。
嘘でも苦しくなるし、怒りが収まることはない。周りにバレないように必死に口角を上げて笑みを作る。これだけでも、十分に演技力があるのではないか、と思ってしまう。