△は秘密色、○は恋色。~2人の幼馴染みを愛し、愛されてます~





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 虹雫は、またあの出版社を訪れる事にした。
 一条に話がしたいとメールをすると、すぐに返事がきた。また会社での話し合いになるとの事だった。以前の打ち合わせ打ち合わせからまだ1週間ほどしか経っていない。きっと一条は出版の話を受けると思っているのだろう。
 けれど、虹雫はそれを断るつもりだった。

 虹雫がその出版社に小説を送ったのは『夏は冬に会いたくなる』が自分のものだと知ってもらうため。取り戻すためだった。それが無理だと言うならば、わざわざ自分の作品を盗作したものを出版している会社から本を出そうとは思わない。他に必要としてくれる会社を探せばいいのだ。
 なので、条件が合わなかった事を理由に断ろう。そう決めてから、虹雫の気持ちは少しだけ軽くなった。

 けれど、盗作をどうやって取り戻すか。それは全く方法が見つかっていない。早くそれも見つけないと、と虹雫は焦ってしまっていた。
 少しでも道筋が出来てから、宮に会おうと思っていた。

 自暴自棄になってしまっていた虹雫の行動により、宮に距離を置かれてしまった。自分の気持ちと、これからの行動をしっかりと決めてから会わなければ、宮だって納得しないのではないか。そんな風に思ったのだ。
 そのため、すぐに一条に連絡をしたのだ。
 『夏は冬に会いたくなる』を諦めない、という意志を伝えるために。




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