△は秘密色、○は恋色。~2人の幼馴染みを愛し、愛されてます~



 やっと静かになり、作業に集中出来る。
 そう思ったはずだが、キーボードの上の手は、電池切れの人形のように動かなくなってしまった。


 作業に没頭していても、フッとした時に彼女の顔が浮かぶ。普段ならば、咲いたばかりのような生気溢れる華やかな笑顔。けれど、最近は違う。雨に打たれて花びらから次々に涙が出ていそうな悲しんだ表情だ。

 どうして、あんな酷い事を言ってしまったのか。今考えると、必死に前を向き始めひとつの夢の叶え方を知った彼女に、「頑張ったな」と一言伝えてやれていればよかったのかもしれない。
 けれど、それはどうしても出来なかった。今、もう一度同じことを言われたとしても、怒ってしまうだろう。


 それぐらいに、虹雫の言葉は宮を悲しくさせた。

 どうして、諦めると決めてしまったのか。
 自分の夢を見つけて、それに向かって必死にもがき完成させ、華々しくデビューする夢を、他人に盗られ、騙されて侮辱されたのに。
 それをすべて忘れてなかったことにする。


 虹雫にはそんな事を言ってほしくなかった。
 取り戻したい。守って欲しい。手伝って欲しい。

 その言葉をずっと待っていたのだ。そのために、宮はずっと影で準備していたのだ。
 それなのに、どうしてあんな事を言ったのか。

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