△は秘密色、○は恋色。~2人の幼馴染みを愛し、愛されてます~
「蜥蜴、何かあったのか?」
「ターゲットが動きました」
「どういう事だ……?」
早口でそう報告した蜥蜴に対して、宮は低い声で答える。
ターゲットというのは、もちろん澁澤の事だ。あの男が今度は何をしようとしているのか。宮は、焦る気持ちを抑えながら、次の蜥蜴の言葉を待った。
「はい。前、椛さんがターゲットのPCに小さなシールをこっそり貼ってもらったじゃないですか」
「あぁ、あの小型のGPSつきのだな」
「そうです」
映画撮影がスタートした初日。
モデルの椛として澁澤に近づいた剣杜は、あの男と距離を縮める事の他にある事をお願いしていた。
それがGPS装置を澁澤の私物に取り付けるというものだった。蜥蜴は「作家はきっとPCを大切にしているでしょうし、盗作事件の証拠になるようなもの、あの脅しに使う写真や小説の原文などがPCに入っていると思います。他人に見せたくないもの、犯行ばれる証拠になる危険なものはきっと肌身離さず持っていたいのが犯人の心理ですからね」と、PCにつけるよう伝えたのだ。
その話をするという事は……そこまで考えが至った宮はすぐに「どっちだ!?」と蜥蜴に大声で問いかけた。
澁澤にGPSをつけたのは、男の動きを把握したい理由もあった。
だが、1番は虹雫との接触を防ぎたかった。ただでさえ、過去の記憶が虹雫を苦しめているのだ。その元凶でもある男と対面させてしまれば、虹雫はどうなってしまうのか。
想像したくない場面だった。
そのため、虹雫の日常生活での活動範囲内に澁澤が侵入した際に、知らせるようした、と蜥蜴が話したのを宮は覚えていた。そしてその蜥蜴が、機械音が鳴った後に澁澤に仕掛けたGPSの話をしたとなると、澁澤が虹雫の傍にいるという事だ。
虹雫の活動範囲として設定したのは、彼女の自宅と職場の図書館。
宮は、スマホと車のキーを持ち、財布をジャケットのポケットに突っ込んでホテルの扉を開けた。
「自宅付近に近づいてます!」
「くそッ!!」
宮は、蜥蜴の言葉を最後まで聞かずにホテルの廊下を掛けだした。