△は秘密色、○は恋色。~2人の幼馴染みを愛し、愛されてます~
どうして、彼女は辛くても苦しくても怖くても、いつも自分の前で笑うのだろうか。ありがとう、と感謝をしてくれるのだろうか。
抱きしめるだけで何の力にもなっていないと言うのに。
やはり、お試しの恋人など止めてよかったのではないか。こんな役立たずの男など、虹雫とは似合わないのだから。
「ごめんね……私が余計な事、したから。宮に振り向いて貰いたくて必死になってた。……こんなのだから、お試しの恋人のままだったんだなって。いつも、迷惑かけてばっかりなのに、助けに来てくれて、ありがとう。……でも、もういいよ」
「え………」
「もう、私は宮と対等な人間にはなれない。もう小説も夢も、怖さから逃げるためならやめたいって思っちゃうの。頑張っても頑張っても、あの人か頭に浮かぶ。そして頑張ろうって忘れるのやめたら、また会った。そして、こんな写真………宮には本当は見られたくなかった………」
「虹雫……」
「宮の事、もう諦めなきゃって思ってるのに、こうやって守りに来てくれて抱きしめてもらえると嬉しくて、また甘えちゃう。……だから、もうこれでおしまいにする」
泣きながらも必死に笑みをつくり、大丈夫だよ、と宮を安心させるように話す虹雫。
昔と同じだ。傷つきながらも、俺に安心させようと、不安にさせないようにと笑うのだ。
そんな痛々しい彼女を見て、自分のやってきた事が全て間違えだったとわかった。
彼女の「忘れてほしい」という約束を自分の気持ちも伝えずに、受け入れてしまった事。
何も言わずに勝手に盗作の事を調べ、解決しようとしている事。
虹雫が何よりも大切で、愛しているのに、それを隠し、勝手にけじめとして全て解決してからと決めていた事。
そして、「お試しの恋人」なんて、馬鹿げた約束までしまった。
そんな事をしなくても、恋人になりたかったはずなのに、何をかっこをつけていたのか。
自分を好きでいてくれる、愛しい相手を待たせて、不安にさせてまで我慢することだったのか。