△は秘密色、○は恋色。~2人の幼馴染みを愛し、愛されてます~
蜥蜴が渡してくれた鍵は、すんなりと宮の部屋の扉を開けてくれた。
信用していなかったわけではないが、「本当に開いた」と驚いてしまう。
真っ暗な部屋。電気をつけて「お邪魔します」と声を出すがそれに返事をしてくれる者はいない。
虹雫は、蜥蜴の言葉を信じて食材を買って部屋に来ていた。キッチンにそれらを置いて、リビングに足を踏み入れる。少し散らばっており、ソファには宮の脱ぎ捨てた服、テーブルには飲みかけのペットボトルとコンビニで買った菓子が置かれていた。そして、その脇にあったものを見た瞬間、虹雫は目を大きくあけてテーブルに駆け寄った。
「これ、私の日記。どうして、燃やしたはずなのに……」
火を囲んで「忘れる」と約束を交わしたあの日の記憶が蘇ってくる。
あの日、夢を書き綴り、執筆の記録を残していた日記。それを燃やす事で小説家になる夢も生み出した作品も、澁澤に脅され盗作された事も忘れるはずだった。燃やしたはずの日記を宮が持っていた。どうして?と思い、その時の事を思い出す。そういえば、燃やす直前に宮が水を買ってきて欲しいと虹雫に言ったのを思い出した。そして、コンビニで水を買ってくると、すでに日記は燃えていたのだ。宮は日記を燃やさずに、何か他の本を燃やしていたのだ。
その事を初めて知った虹雫は驚きと、宮の「忘れたくない」という気持ちと行動に胸が熱くなった。
自分は恐怖から忘れる事を望んだ。
けれど、宮はずっとずっと虹雫の夢を大切にしてくれていた。
その気持ちを抱きしめるように、虹雫は日記を胸に抱き寄せて目を瞑った。
「宮、早く会いたいよ……」