△は秘密色、○は恋色。~2人の幼馴染みを愛し、愛されてます~




 それが虹雫の1番の願いだった。
 その願いが届いたのだろうか。ガタンッと玄関から音が響いた。
 それと同時に「蜥蜴か?勝手に合鍵つくったのか、それとも不法侵入か?」と、宮の疲れた声が聞こえた。虹雫の靴が置きっぱなしになっているのにも気づかずに、蜥蜴が部屋にいると思っているようだ。虹雫は日記を持ったまま、駆け出した。声よりも体を先に動かしたかった。1秒でも早く彼に会いたかった。


 ドタドタッと玄関に向かうと、宮は「……やっと戻ってこれた。予想外に時間がかかった」とため息をつきながら、ゆっくりと顔を上げた。
 そして、宮の視線と虹雫の視線が合うと彼は驚いた表情になり、そしてすぐに顔を歪ませた。


 「虹雫っ!どうしてここに……」
 「宮、私あなたに会いたかったの。だから、来ちゃった」
 「………ごめん、迎えに行くって約束を守れなくて」
 「それはいいの………!だって、宮は私を守ってくれた。小説も夢も、自信も。そして、私を愛してくれていた。それなのに、私、ずっと自分のことばっかり、ごめんなさい」
 「虹雫。俺は、虹雫が好きなんだ。ただそれだけだよ」


 虹雫の謝罪の言葉。
 宮は影でずっと愛していてくれていた。「愛しているよ」と囁くよりもずっとずっと深い愛をくれていた。それなのに、それにも気づかずに一人悲しんで片思いだと苦しんでいた。
 「ありがとう」だけでは足りない。「ごめんなさい」だけでは許されない。
 どんな言葉を言えば彼に気持ちは伝わるんだろうか。

 宮を見つめながら言葉を探すが、どの言葉も当てはまらない。
 口を開いて声を出そうとするが、なんといえばいいのかわからず黙ってしまう。ただただ、瞳から涙がこぼれるだけだった。
 そんな虹雫の頬に温かい手が添えられる。大好きな宮の手だ。ごつごつとして、細い、男の人の手。


 「…………虹雫、俺の事を愛してるって言って。その言葉をずっと俺は待っていたんだよ。全てが終わった後に、君から聞きたかった言葉なんだから」



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