△は秘密色、○は恋色。~2人の幼馴染みを愛し、愛されてます~
5話「ご報告」




   5話「ご報告」



 
 「お、送ってくれてありがとう、宮」
 「気にしないで。じゃあ、これからよろしく」
 「う、うん」


 自宅前まで送って貰い、虹雫が助手席から降りようとした時だった。


 「あ、待って」
 「どうしたの?」
 「恋人らしく、キスしてみる?」
 「え……」


 宮は、虹雫の腕を掴み、軽く自分の方へ引き寄せる。
 あまりの事に、虹雫は体に力が入っておらず、そのまま宮の方へ倒れ込んでしまう。宮は「ごめん。少し強くしすぎた、大丈夫?」と、心配してくれるが、それどころではない。
 片思いの幼馴染は今「キス」と言ったのだ。

 確かに大人になってからのキスなど、ハードルは低いのかもしれない。
 けれど、虹雫にとっては宮の住む高層マンション並みに高い。しかも、長い付き合いで、長い片思いだ。そんな相手とキスをする妄想をしなかったわけではないが、実際にするとなると、まだ緊張が大きい。


 けれど、気持ちは大きく傾いている。
 大好きな人とのキス。したいと思ってしまうのは、はしたないことなのだろうか。
 だけれど、そこまで思って宮の方を見る。
 そう、彼はまだ迷っているのだ。だから、お試しの恋人になる。そんな相手にキスなどしてもらうわけにはいかない。


 「宮が、私にキスしたいと思ってくれたら、がいい」


 気づくとこんな言葉が出ていた。
 けれど、これが今の虹雫の素直な気持ちだった。すると、宮はきょとんとした後に楽しそうに、いや、嬉しそうに笑った。



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