△は秘密色、○は恋色。~2人の幼馴染みを愛し、愛されてます~
言葉と同時に、ひらひらと目の前に桜の花びらが舞い降りてくる。
最後の一段を登りきると、2匹の白狐の像が迎えてくれる。子どもの頃はその真っ白さと、にやりとした笑みの狐が怖かったけれど、今ではそれさえも愛着がある。その狐の背景には社がありそれに寄り添うように大きな桜の木が立っている。その桜は見ごろを迎えていたようで、淡いピンク色の花を咲かせていた。
「すごい。久しぶりに見たけど、ここの桜は本当に圧巻と美しさがあるよね」
「そうだな。しばらく見入ってしまうから不思議だ」
2人は茫然とその桜を見つめていた。
しばらくすると、宮はすたすたと桜に近づき、荷物を置いた。
そして、大きなバックから小さなビニールシートを取り出して敷き始めると、テイクアウトした食べ物を並べ始めた。
「え、ここで食べるの?」
「よくここで花見してただろう。3家族合同で」
「そうだけど。いいのかな……」
「神主さんだって、いつも賑やかでいいですねって言ってくれてたし、ここには住んでいる人もいないんだし、片付けをすれば大丈夫だよ。はい、虹雫。寒くなるかもしれないから」
「ひざ掛けまで持ってきてくれたの?宮は、こういう所、抜かりないよね」
「ほら、座って。お好み焼き、好きだろう」
そう言うと、先に座っている宮が手招きしてくれる。
虹雫はクスリと笑い、靴を脱いで彼の隣に座った。
そして、ジュースで乾杯をして、桜を見ながら遅い夕食を食べた。どうやら、どこかの花見会場の出店で買ってきてくれたようだ。
「お祭りとかで食べる焼きそばとかお好み焼きってどうして、こんなにおいしいんだろう」
「昔の思い出が混ざってるからだろう」
「……なるほど。そんな風に考えた事なかったけど、確かにそれぞれの思い出があるから、さらにおいしくなるんだろうな」
「3人でよく分けてあって食べたな」
「うん。美味しかったね。わたあめの絵柄で喧嘩したり、リンゴ飴を落として割れちゃって悲しくなってたら、宮が自分の分と交換してくれたよね」
「あー、そんな事あったな。よく覚えているね」
「覚えているよ、宮の事も剣杜の事も。大切だから」