△は秘密色、○は恋色。~2人の幼馴染みを愛し、愛されてます~
8話「震える指先と瞳」
8話「震える指先と瞳」
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4月に入り、昼間は大分温かくなった。
剣杜が住む町では、桜も満開になっていた。今年は忙しく、きっと花見会場に行くことはないだろう。仕事を移動する車の中から咲いている桜をボーっと流れるように見るだけだった。
けれど、仕事が忙しいからと言って呆然と過ごすわけにはいかなかった。
宮との約束があるからだ。
けれど、まだ正式に何をするかは教えて貰ってはいない。
宮がやっている事を手伝いをする。それだけだった。
今は仕事の合間のささやかな休憩時間。
1人になりたいとマネージャーに伝え、移動車の中も居させてもらっていた。
スマホを取り出して、ある人物に電話を掛ける。
これは緊急事態なのだ。
すると、相手も何かを察知したのかすぐに電話に出た。
『………』
「仕事中に悪いな」
『………』
「はいはい。けど、今はその話じゃないんだ。まずい事になりそうだ」
『………』
「そ、俺の幼馴染がね。ちょっと気になる事があって。厄介な事になりそうなんだよ」
『………』
「だといいんだけど。まぁ、一応な。フォローしてくれないか」
『………』
「わかってる。礼は弾む」
そう言うと、電話口の相手の声音が変わった。
どうやら、引き受けてくれるらしい。まぁ、断るはずもないのだが。
「2人にバレないようにしてくれよ。まぁ、バレたら俺らも不味いだろうし、お前の事だからしっかりやってくれるだろうけど」
『………』
「じゃあ、何かあったらお互いに連絡は早めにって事で」
用件は終わった後に言葉を交わした後、相手が通話を切った。
剣杜はスマホをカバンの中に放り投げると、そのまま座席にごろんと体を横たえた。
「宮、悪いな……」
その呟きは、伝えられない言葉だった。
秘密は秘密を生み、嘘は嘘を生む。
本当にその通りだと実感し、剣杜は頭が重くなり、ゆっくりと目を閉じた。