△は秘密色、○は恋色。~2人の幼馴染みを愛し、愛されてます~
9話「重なる約束」
9話「重なる約束」
▲▲▲
「はい。これ、頼まれたものです」
そう言って目の前に座った宮よりも大分年下に見える男は、有名コーヒーチェーンのロゴは入った紙袋をテーブルの上に置いた。今はそのチェーン店内にいるため、何の不自然さもない。だが、その中にはコーヒーでも食べ物でもないものが入っている。
「中身を確認してもいいか?」
「どうぞ。俺としても間違っていて報酬半額とか言われたらいやだから確認はしてもらいたいですね」
「わかった」
大学生のような見た目の男が、慣れたようにそう言って笑った。
アッシュグレーの髪はマッシュショートが似合う男性で、黒のフレーム眼鏡が知的な雰囲気を醸し出している。だが、服装はダボッとジージャンに白シャツ、黒の細見のズボン。顔も童顔で、20歳そこそこだろうと思っていた。が、初めて会った時に「宮さんと同い年ですよ」と言われた時はかなり驚いたものだった。
「#蜥蜴__とかげ__#、ここで見て大丈夫なのか?」
「大丈夫ですよ。ここは店の一番奥。そして、隣には誰もいない。それに今は監視カメラにはダミーの映像が流れているので、俺と宮さんが会っているのは記録されません。もちろん、ここ周辺のカメラはしっかり操作しておくんで」
「わかった」
蜥蜴と呼ばれた男。それが彼の名前だった。
といっても、もちろん本名ではない。彼の異名でもある。しっぽを捕まえたとしても、その頃には本体は遠い所に逃げていてなかなか捕まらない。そのため、しっぽを切って逃げる蜥蜴とその男は呼ばれていたのだ。それを本人も気に入り、そう名乗っている。
宮は蜥蜴から預かった紙袋から、茶封筒を取り出した。
そこから出てきたのは、白黒の写真だ。画像は少し荒いが、誰が写っているかはよくわかった。その場所は、ここではないとある小さなカフェのようだった。
制服を着た女子高生と40代半ばぐらいの中肉中背の男が向かい合って何かを話している。
それを見た瞬間、宮の鼓動が早くなり一気に体が熱くなった。
この時に戻れれば。
何度そう思った事か………。
写真持つ手の力が強くなり、くにゃりと紙は曲がってしまう。
そこでハッとした。自分が怒りに支配されていた事に。