△は秘密色、○は恋色。~2人の幼馴染みを愛し、愛されてます~
コーヒーチェーンを出て車に乗ると、やっと一安心する。先ほど蜥蜴から貰ったものが入っている紙袋の中身だけを鞄の中に入れる。そうしてしまえば、仕事の書類と一緒になり不審にも思わないだろう。今から、虹雫と剣杜に会うのだから、バレてはいけない。
スマホを取り出して、メッセージを確認する。すると、食事会が宅飲みに変更になったようだ。原因はすぐにわかる。きっと、虹雫の体調が悪くなったのだろう。剣杜に聞いてると、どうやら何か要因があったようだ。スマホで説明できないこととなると、やっかいなものだろうか、と宮は思った。何にしろ早くに2人所に着きたかった宮は、いつもより早めに車を走らせて剣杜のマンションへと向かった。
剣杜のマンションはセキュリティーがしっかりしているこじんまりとしたマンションだ。高層マンションがあまり好きではないという剣杜のためにマネージャーが見つけてくれたものだ。その分家賃は高いらしく「家賃のために働いてるみたいだ」と、彼はよく言っていた。
「なるほど……そんな事があったのか」
宮が剣杜の部屋に到着すると、虹雫はソファで休んでおり、剣杜は何やら深刻そうな表情で話を始めた。彼からここにくる前の一部始終を聞いた。そして、彼女が疲れて寝てしまっている理由もわかった。
「やっぱり、あの本って……」
「あぁ、あの本だな」
「……宮は知ってたのか?」
「いや、調べた。それに、少しタイトルを変えてある」
「そうか。偶然にしても悪かった」
「仕方がないだろ。剣杜は知らなかったんだ」
目の前で真っ青になった虹雫を見て、剣杜は責任を感じているようで、悔しそうに声を洩らした。2人でリビングのソファですやすやと寝ている虹雫を見つめながら、キッチンで話をしていた。小声であるが、2人の声は重い。いや、内容が重いのだ。
「……忘れるって約束しても、忘れられるはずないよな」
「あぁ。忘れたふりをし続けても、思い出したくない事に限ってちょっとした瞬間に思い出しちゃうもんだろうからな。虹雫は当事者だ。きっと、苦しいときとあるはずだ」
「……」
「俺の方で上手くいったらまた話すよ」
「わかった。覚悟はしてる」
「これ……読んでみるか?」