△は秘密色、○は恋色。~2人の幼馴染みを愛し、愛されてます~
「新刊や話題書の棚にはいかないようにしよう」
そう心に決めて、先程よりも少し重くなった足でゆっくりと歩き始めたのだった。
本屋に着いてからは、あっという間に時間が過ぎていった。
気になっていた作家の本をパラパラと見ているうちに、夢中になっていたようだ。気づくと店内に閉店のアナウンスが流れていた。虹雫は急いで本をレジに持っていき会計を済ませると店を出た。思ったよりも時間がかかってしまい、いつもよりも帰宅が遅くなりそうだ。昨日のみそ汁の残りと冷凍庫にあるおにぎりを温めれば、本を読みながらご飯が食べられる、と頭の中で考えながら帰り道を急いでいた。
「あれは、………宮?」
見慣れた横顔が、少し離れた人混みの中で目に留まる。だが、いつもとは違い、髪をオールバックにして整えており、見たこともないスーツに身を包んでいた。一瞬人違いかと思ったが、それでも宮だとわかる。ずっと一緒に育ってきた幼馴染で長い間片思いをしてきた相手なのだから当たり前だ。虹雫は、駆け足で彼に近づこうとした。が、すぐにその足が止まる。
宮の隣には見知らぬ女性がいたのだ。
年上の女性に見えるが、華やかなメイクと体のラインが出る洋服がとても似合う、色気のある女の人。高級バックや宝石をつけているが、それらにも見劣りしない美しい人だった。
2人はとても仲がよさそうな雰囲気で、手は繋いでいないものの距離はとても近かった。その女の人が宮を見る目は、とてもにこやかで艶がある。宮の事が気になっているのだろう。それがすぐにわかるものだった。