△は秘密色、○は恋色。~2人の幼馴染みを愛し、愛されてます~




 「私も、仕事を頑張れば、自分に自信が持てるようになれば、宮もこっちを向いてくれるかな……」


 宮は仕事から帰り、ずっと使っていなかった、小さなノートパソコン。
 作業机の端に布が掛けて、見ないようにしてきたものだった。今でもつくだろうか、と電源を入れてみると、鈍い機械音と共に画面が光り始めた。まだ、動く。
 パスワードを入力して、ネットに繋ぐ。動作は遅いが、無事に接続も出来た。
 震える手で、昔よく使っていたサイトを開く。
 そこをタップして、色とりどりのイラストや文字が出た瞬間、虹雫の胸はドクンッと大きく跳ねた。
 そこに「『夏は冬に会いたくなる』 映画化決定!」と、大きく広告が出ていたのだ。


 パタンッ!


 虹雫は思わずノートパソコンを勢いよく閉じてしまった。

 そして、荒くなる呼吸を感じながら胸に手を当てた。
 やはり無理なのだろうか。
 
 忘れると約束した事を、自分から破ろうとしている。そこまでして、忘れたかったのに、自分から近づいていくなんて。
 止めよう。辛くなるだけだ。誰も自分の事を待ってはいないのだから。


 けれど、頭の中には宮とあの女性の横顔が頭をよぎる。
 あれから、宮と会っていたももやもやして、心から笑えていない気がしていた。このままではだめだ。そう思っているのに、解決できない。

 けれど、宮と離れるのは嫌だ。
 本当の恋人になるために頑張るのではなかったのか。
 自分に自信を持って、宮に振り向いてもらうために。


 虹雫は大きく深呼吸を何度か繰り返した後、ゆっくりとノートパソコンを開き、キーボードをゆっくりと指で叩き始めた。
 


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