△は秘密色、○は恋色。~2人の幼馴染みを愛し、愛されてます~
宮はスマホを見つめると、ハーッとため息をついた。そんな様子を見て、一条は心配そうに宮を上目遣いで見上げる。
「もしかして……お仕事?」
「えぇ、会社からです。この時間だとトラブルですね。すぐに行かなくちゃ」
「じゃあ、私はこのホテルに一人ね」
「戻ってこれたら連絡します。でも、たぶん難しいので、また会いましょう。しっかり休んでください」
「……わかったわ。今度は雅樹さんから誘ってね」
「えぇ、そうですね」
エレベーターで一条と笑顔で別れた後、宮はすぐに真剣な表情に戻った。
宮は一人でホテルを出て近くに泊めてあった車に乗った。そして、乱雑に高級ブランドのジャケットを脱いで助手席に投げて、オールバックにしていた前髪を手でグシャグシャにしながらネクタイを緩めた。
そして、すぐにスマホを操作して、男に電話をかけた。
「終わったよ」
『お疲れ様です。宮さん、やりましたねー!いい演技でした』
「やめてくれ。蜥蜴が聞いてると思うとやりにくくて仕方がなかったよ」
電話口の相手は蜥蜴だ。
そして、彼は宮と一条の会話を全て聞いていたのだ。彼が宮に渡した、腕時計。それがGPRと盗聴機だったのだ。そのため一条との話の内容は全て知っている。そのため、蜥蜴はニヤニヤとした口調で「宮さんが映画に出ればいいのに」と冗談を言ってきたが、宮はスルーした。
「あの人は、本当に椛を起用すると思うか?」
宮は思わずそんな弱音を吐いてしまう。
一条で交わした話は、口約束にすぎない。彼女が椛を起用しなければ、宮の計画は全てが無駄になってしまうのだ。それに彼女にはまだまだ役に立ちそうな情報を貰えるかもしれないのだ。脅す事も出来ない。
すると、宮の心配とはよそに蜥蜴は、何故か楽しそうに笑い続けていた。