△は秘密色、○は恋色。~2人の幼馴染みを愛し、愛されてます~



 「ん………、宮、剣杜?」
 「あぁ、起きたか。剣杜は学校に行ったよ」
 「学校、もうそんな時間なの?私も早く準備しないと」
 「今日は休みにしておいたよ。俺の親が連絡しておいた……」
 「え……」
 「もうお昼前だよ」
 「……私、そんなに寝ちゃったんだ」


 呆然としながら、時計を見つめる。虹雫の瞼は少し腫れている。


 「お風呂沸いてるけど、入る?」
 「うん。ご飯作ってくれたけど、先にお風呂入りたいな」
 「いいさ。その間、俺は一回家に帰って着替えてくるよ。虹雫の制服もクリーニングに出しておくから後で頂戴」
 「あ、うん。ありがとう。………宮、いなくなるの?」
 「すぐに帰ってくる」


 不安そうにする虹雫に優しく微笑みかけるが、虹雫はまだ心配そうだった。
 昨夜の事があり1人になるのがまだ怖いのだろう。宮は「わかった」と言葉を続けた。


 「じゃあ、虹雫がお風呂から上がるまで待ってるよ。一緒に俺の家に行こう」
 「う、ううん!大丈夫。ごめん、我儘言って。着替えてくるから、ちょっと待っててね」


 虹雫はすぐに立ち上がると、「ごめんね」と謝りながら2階の自分の部屋へと向かった。
 途端に、部屋の中は静かになる。
 2階建てに一戸建ての家。ここに、虹雫は一人で暮らしていた。こんな広い部屋に一人で暮らしているのだ。時々親戚が様子を見に来ることもあるが、形だけのようで、1か月に1度来て少し話をして食材などを置いて帰っていくそうだ。
 それにこの家ももう少しで手放す事になっていた。虹雫がこの家に一人で住む理由もないし、親戚がこの土地に新しい家を作るそうだ。そのため、虹雫がこの家から出ていく事になっていた。もちろん、多額の金は入ってくるので、一人暮らしも快適に出来るはずだ。
 だが、幼い頃からの思い出のつまった家から出て、なくなってしまうのは相当寂しいようだ。そして、宮と剣杜の実家からも離れてしまう。幼馴染じゃないみたいだね、と苦笑いを浮かべて言った虹雫の表情を宮は今でも覚えていた。



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