△は秘密色、○は恋色。~2人の幼馴染みを愛し、愛されてます~
★★★
渦中の澁澤悠陽は焦っていた。
今、映画化になった自分の小説である「夏へ冬に会いたくなる」にある噂が流れていると、出版社の知り合いから話を聞いたのだ。
それは、数年前に同じような話が小説投稿サイトにアップされていたというものだった。当時もそれは掲示板などで騒がれていたが、澁澤が自分自身で「その作者がデビューするらしい」という書き込みをし続けておさまったはずだった。が、どうして、この映画化のタイミングでその話が再度出てしまったのか。澁澤は焦りと同時に疑問が走った。そして、それとなく噂について探りを入れてみると、ありえない事を耳にしたのだ。
「匿名のメールで、『夏は冬に会いたくなる、は自分の作品です。しっかり当時の事を調べてください』みたいな問い合わせがあったみたいなんですよー!有名になると、こういう変わった奴が出てくるんですよね」
そう編集部の知人に聞いたのだ。
確かに映画化になるほどの物語は、こういった問い合わせが多くなってくるだろう。普通なら気にすることもない話で、出版社も慣れたものなのだろう。が、心当たりのある澁澤は違った。
「あの女、まさかバラしたわけじゃないよな………」