Mr.キラーの殺人
私はいつもそんな彼と一緒に帰る。


そして同居人でもある。


え?


大人の男性と同居で大丈夫なのか?


あぁ、棗さんなら大丈夫でしょ。


めっちゃヘタレだし。


なんなら話すだけでも緊張してたし。


今は慣れたから平気らしいけど。


彼はいつも、署であった面白い話をしてくれる。


私を怖がらせない為なんだろう。


別に平気なんだけどな。


まぁそれでも面白いから私は黙って聞いている。


つん、とあの匂いがする。


鉄くさい、あの匂い。


「…棗さん」


「……オッケー、任せて」


棗さんは通信機?を取り出す。


生憎正式名称はわからない。


取り敢えず今は事件が優先だ。


私と棗さんは走り出す。


私は先頭に出て匂いを追う。


あの某アニメみたいに匂いが糸になって、


見える訳ではないけど。


だっ、だっ、と私達の足音が夜の街に響く。


夜でよかった、人があまりいないから、


真っ直ぐ走れる。


私はあまり体力はない。


どちらかと言うと短距離走派だ。


かわって棗さんは逆。


長距離走のが得意。


私がダウンすると、担いで連れ行ってくれる。


有難いのは有難いのだが、少し酔うこともある。


…ここの、路地裏だ。


案外近くだった。


最初の方は匂いの強さで分かったのだが、


最近はずっと同じ強さなのだ。


それはさておき、私は路地裏に一歩踏み出す。


……やっぱり、そうだ。


頭のない、花の生けられた死体。


また彼だ、『Mr.キラー』。


最近はなぜか、彼の殺人現場を見る。


ほぼ、毎日のように。


少し身震いをしてしまう。


もしかして、私を知っているのだろうか。
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