待ち人、音信なし
ひとつ踊り場を挟んだ下の階段で、携帯を取り出す。イヤホンを耳につけた。
こんなに、文明機器は進化しているのに。
戦争をする理由は何だったのだろう。
大義のため? 領地のため? お金のため?
愛する誰かの為に、と掲げていたそれは、帰ってくる頃には全部燃えていた。
……それとも、皆はそんなに思ってはないのかな。
私が、私がだけが、ここに取り残されて。
『もしもし、元気かい?』
彼の声が身体に流れる。
『こっちは今、雨が降ってるよ』
こっちは晴れたよ。
虹が出てる。
なんてことはない、ただの留守電。