待ち人、音信なし
偶々録音して取っておいたそれが、彼を思い出す最後の砦。
戦争に行く前の彼の声。
時間の合わないとき、彼はよく留守電を入れてくれた。
『――愛してる、イヴ』
私も愛してる。
三年経っても、これから先もずっと。
『もしもし、元気かい?』
繰り返されるその声。
もう私の声に答えることはない。
雨が降っても、晴れても、虹が出ても。
貴方は、もう。
「おい」
耳からイヤホンが外れ、声が入っくる。
すぐ近くにあった瞳の色が、菫色。
ノアさんが膝掛けを私の膝に落としてくる。
「休憩終わるぞ」
ぽと、とその上にグレーのハンカチが乗った。