待ち人、音信なし

この人は愛想というものをどこに置いてきてしまったのだろう。

「ノアさんの家にはテレビがあるんですか……?」
「俺の家を何だと思ってんだよ」
「天気予報の他に何観るんですか?」
「……映画」

想像がつかない。

二件周って帰ると、退社時間になっていた。
トリーはとっくに帰っていた。フランキーの元に行ったのだろう。

私は持ってきた傘を掴んで、所長に挨拶をする。

「お疲れ様です、帰ります」
「お疲れ様。夜、行くの?」
「一応、行ってきます」

所長は私の彼のことを知っている。
そして、私がボロボロのときに拾ってくれた恩人だ。

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