待ち人、音信なし
いつから後ろにいたのだろう。
ノアさんも花を浮かべたのだろうか。
全然、想像がつかない。
この人に関しては、想像がつかないことばかりだ。
持っていたハンカチを背中へと隠す。ばっちり、見られていたけれど。
ノアさんは仕事着とは違う、黒いシャツを着ていた。
「腹減ったな」
「……はい?」
「美味いヌードル屋がある」
「そ、うなんですか」
「食べるか?」
尋ねられて、やっと、誘われていたのだと気付いた。
お腹は空いていた。
なので、頷いた。
先ほどまでの涙は引っ込み、ハンカチも鞄にしまった。