待ち人、音信なし
「美味しいです」
「だとさ」
「あざっす!」
ぺこ、と店主さんが頭を下げる。
「お知り合いですか?」
「学校の、後輩」
「常連さんです」
ノアさんは顔も上げず答える。
そんなのには慣れた様子で、店主さんは指を顎に当てて私をじっと見た。
「もしかしてカノ」
「同僚です」
「同僚だ」
二人で否定した。
お腹が膨れると悲しみは遠くへ行ってしまった。
私が財布を出すより先にノアさんがお会計を終える。
「ちょ、っと、ま」
「あざっしたー」
すたすたと店を出ていく背中を追う。
仕事のときもいつも先に行ってしまう、その背中を。