待ち人、音信なし

確かにその通り、だが。

この重たい沈黙の中二人きりなのも、なかなか危ない。
喉元で止まっている質問が口から出てきそうだ。

前は何してたんですか?
どうして警備会社は辞めたんですか?
ハンカチは、どうして要らないんですか?
なんでいつも不機嫌なんですか?

窓の外を見る。既に暗い。
ワイパーが動き始め、フロントガラスについた小雨を除いていく。

「……ノアさんは雨好きですか?」
「普通」
「じゃあ晴れは?」
「普通」
「曇り」
「嫌いだ」

当たり障りのない質問。一問一答式というのはいつものことなので、気にしない。

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