待ち人、音信なし
「曇りは、どうして嫌いなんですか?」
なんとなく訊いてみる。
「知ってどうすんだ」
「……へえって思うだけです」
「傷が痛む」
「傷?」
「ならねえじゃねえか」
ふ、と少し笑った。
珍しくて、横顔をじっと見てしまった。
「動いた」
その言葉に前を見ると、前の前の車が動く。
「腹減った」
「そうですね」
「肉が食いたい」
「私ハンバーグが食べたいです」
合挽きの、大根おろしソースで。
でも雨降ってるし、家で……。
徐々に動き始めた列から抜けるように、横の道へ入った。いつもとは違う道順で行くのか。