待ち人、音信なし

店を出る。

「……ご馳走さまです」
「すげえ不満そうな」

呆れた顔から顔を背けた。

「なんかすごい、一杯字が書いてある」

私は丸まった紙を解き、広げる。
願望、学問、仕事、旅行……と色んな欄がある。書いてあることはふわっとしていて、本当に未来のことなのか? と怪しく思った。

「待ち人……」

アイザックを思い出す。

待ち人、音信なし。

胸がぎゅっと苦しくなる。そんなことは知ってる、と誰かに叫びたくなる。

広げた紙を元の形に戻した。

「お前あれ、未だ聴いてんの」

尋ねられた意味が分からず、顔を見上げた。
菫色の瞳が見下ろしている。

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