待ち人、音信なし
それなら丁度良い、と胸の内を吐露する。
「彼の顔が、声が、どんどんぼやけていくんです。忘れちゃいたい自分と、それが赦せない自分がいて」
足を地面に下ろす。
「でも、ノアさんと一緒にいると、そういうこと全部吹き飛ばしてくれるので楽です」
「……あ?」
「嫌そうな態度とか面倒くさそうな態度とか見てると、イラッとして」
「……お前、長い前置きして喧嘩売ってんのか?」
「まさか。毎日、面白くて、楽しいです」
ぽん、と頭に何か乗った。
ノアさんの手だった。
ぽんぽん、と二度。
「イヴ、お前さ」
壁が言葉を話す。