待ち人、音信なし

所長が顔を上げる。

「うん? なんで?」
「前に曇りの日は傷が痛むって言ってて、どこか怪我でもしたのかと。あ、前に警備で働いてたって言ってたから、その時のですかね」
「いや多分、戦争で、かな」
「戦争?」

それぞれの部署で朝礼が始まる声が聞こえる。
うちの方は既に出払っており、ここにいるのは私と所長だけだった。

ノアさんが、戦争に?

「彼、元軍人だから。聞いてない?」

頷いた。聞いたことはない。ノアさんが言ってきたこともない。

それなら、ノアさんもあの戦争に行ったのだ。
アイザックが還ってこなかったあの戦争に。

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